メディカル・プロテオスコープはプロテオミクスのエキスパートです。プロテオミクスの技術開発と医学・生物学への応用を軸に事業を展開しています。また、整備した分析手法を研究機関向けの受託分析にも活かし、我が国のオミクス研究のレベルアップに貢献しています。

新技術情報

新技術情報

このページでは、当社が共同研究などを通じて開発した新規技術を紹介します。

Phos-tag対角線電気泳動

Phos-tagの応用
Phos-tag対角線電気泳動

 当社は、プロテオーム解析に必要な新しい技術の開発、改良研究の成果に特別な関心を持っています。これから当社の研究結果を含め、新しい技術情報をみなさまにご紹介していきたいと考えております。第1回は、Phos-tag対角線電気泳動に関する話題です。

 ショットガン分析の発達により、生体試料中の多種類のタンパク質を比較定量的に同定できるようになりました。リン酸化タンパク質についても同様です。培養細胞では、1回の分析で、2千種類ほどのリン酸化タンパク質、4〜6千のリン酸化部位の同定も困難ではなくなりました。しかし、ショットガン分析では、リン酸化タンパク質やリン酸化部位を同定できるのですが、同じタンパク質にリン酸化状態の異なるタンパク質が存在する場合には、その違いを解明できないことがあります。ショットガン分析では、質量分析の前にタンパク質をプロテアーゼによって断片化してしまうため、その情報が失われてしまうからです。

 Kinoshitaら(2008)によって開発されたPhos-tag SDS-PAGEは、ショットガン分析で明らかにできないリン酸化状態の異なる分子の解析が行える画期的な方法です。しかし、この方法では解決したい課題がありました。タンパク質のリン酸化状態を分析する際には、同一試料をSDS-PAGEとPhos-tag SDS-PAGEで別々に分析します。そのため、SDS-PAGEでもPhos-tag SDS-PAGEでも単一のタンパク質バンドが検出された場合、Phos-tag SDS-PAGEで易動度が変化したのかどうか判定することが困難でした。また、Phos-tag SDS-PAGEで複数のタンパク質バンドが検出された場合には、易動度が明らかに低下しているバンドはリン酸化されていることが判定できるのですが、易動度が最も大きいバンドの易動度がPhos-tagによって変化しているのかどうかは簡単に判断できませんでした。そのため、この問題を解決できる簡便な技術の開発が必要でした。

 当社は、平野 久、木下英司両博士らと共同で、上記の課題を解決できるPhos-tag対角線電気泳動を開発しました(Okawaraら2021)。一次元目にSDS-PAGE、二次元目にPhos-tag SDS-PAGEを用いたこの方法は、非リン酸化タンパク質を対角線上に、リン酸化タンパク質を対角線より陰極側に分離することができます。分離されたスポットをMS/MSで解析すれば、タンパク質を同定することもできますし、同じタンパク質として同定された異なるスポットのリン酸化部位の違いを解明できる可能性もあります。
 

ヒト26SプロテアソームサブユニットのPhos-tag対角線電気泳動パターン(Okawaraら2021)

 

 図は、ヒト26SプロテアソームサブユニットをPhos-tag対角線電気泳動を用いて分離してみた結果です(分離能の高さにご注目下さい)。分離されたスポットは切り取ってエッペンドルフチューブ中でトリプシンを用いてゲル内消化を行った後、LTQ-Orbitrap MSによって分析し、MS/MSデータに基づいてデータベースを検索してサブユニットを同定しました。Phos-tag対角線電気泳動の対角線上のスポットはリン酸化されない対角線マーカータンパク質です。同定されたすべてのプロテアソームサブユニットは対角線の上方に検出されています。つまり、リン酸化されていることを示しています。また、サブユニットの中には、複数のリン酸化状態が存在することを示すスポットが検出されています。

 当社では、これまでのショットガン分析によるリン酸化タンパク質やリン酸化部位の受託分析と共に、Phos-tag SDS-PAGEやPhos-tag対角線電気泳動を用いたタンパク質のリン酸化状態の受託分析も行うことができるように準備を進めています。

2021年5月6日掲載

 
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