メディカル・プロテオスコープはプロテオミクスのエキスパートです。プロテオミクスの技術開発と医学・生物学への応用を軸に事業を展開しています。また、整備した分析手法を研究機関向けの受託分析にも活かし、我が国のオミクス研究のレベルアップに貢献しています。

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研究コミュニティーへ潜入

 当社研究員が、業務の一環と称して自らの研鑚のために参加した学会年会や研究会をご紹介します。

目次

BMSカンファレンス
ハッカソン
HUPO2018
質量分析トレーニングコース

「BMSコンファレンス (BMS2018)」7月4日~6日、宮城県岩沼市

 BMSカンファレンスは日本質量分析学会の分科会のひとつであり、45回を数える歴史ある会議です。今年は宮城県岩沼市の東京第一岩沼リゾートにて2泊3日の日程で開催されました。

 毎年合宿形式で行われています。大学・企業、学生・教授、さらには質量分析の初心者からベテランまで様々な立場の方々が非常にアットホームな雰囲気を作り上げています。筆者は今回で4回目の参加でした。
講演は、質量分析を用いた最新の研究、企業での実例、定量に関する総合討論、さらに各企業からの新技術紹介など多岐に渡り、この分野の現状をひと通り把握するにはうってつけの内容でした。各メーカーからの製品紹介では、最新鋭の質量分析計、ソフトウェア、試薬のほかに、おいしい富良野メロンの販売を全面に出している機器メーカーもありました。

 本年の印象としては、とくに質量分析による「高精度な定量」が求められていると感じました。また、測定の品質管理 (Quality Control, QC) は、メタボロミクス、プロテオミクスに関係なく共通の課題であることを理解しました。

 ナイトセッションやポスター発表では、お互いの立場に関係なく活発な討論ができました。ある大学の学生の方とは入浴中でも、プロテオミクスの網羅性を上げるにはどうしたらよいだろう、の議論で盛り上がったくらいです。また、会場では高濃度試料専用の質量分析計が稼働しており、筆者は持参の鼻炎薬を測定してみました。有効成分由来のスペクトルを確認することができ、場が大いに盛り上がりました。

 この会合では、200名前後の参加者が男女別で1部屋4~5名にランダムに割り振られます。通常の学会大会などではなかなか話しかけられないような著名な先生と同室になることもあり、そんな方々と濃密な関係を築くことができる点がこの会合の魅力の一つです。ちなみに筆者は、社会人3名と学生1名の5人で2晩をともにしました。来年は北海道で開催されるとのこと。ご興味のある方はぜひご参加下さい。

2018年8月13日掲載

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「第2回・質量分析インフォマティクス・ハッカソン・シンポジウム」7月15日~20日、徳島県徳島市

 質量分析インフォマティクス研究会は、日本バイオインフォマティクス学会の公募研究会として2016年4月に発足しました (http://ms-bio.info/)。質量分析とバイオインフォマティクスの両研究コミュニティにおける学際的協力と情報交換を促進することを目的としています(研究会ホームページより)。

 筆者はこのたび本会主催の題記会合に参加しました。「ハッカソン (hackathon)」は比較的新しい言葉でして、「複数の参加者が合宿形式で一堂に会し、意見を交換しながら自分の(またはグループの)テーマであるプログラミングを作り上げるイベント」を指します。今回のハッカソンは、初日のシンポジウムで各種データベースの紹介等もあり、プログラマーでなくても楽しめる内容でした。

 ともあれ、仕事上の必要性はもちろんのこと、自分自身の興味も抑えきれずに参加しました。国内版バイオハッカソンとの合同開催ということもあり、参加者の9割以上がプログラミングをする人でした(当然ですが ・・・)。アウェー感はありましたが、こうでもしないとなかなかお会いできない方々と交流することができ、良い刺激になりました。

 仕事上の収穫がいくつかありましたので、そのうちの一つを紹介します。プロテオームデータのリポジトリとして運営されているjPOST (https://jpostdb.org/) の機能の一つです。

 jPOSTのViewsに行き、特定のタンパク質名で検索すると、タンパク質ごとに過去の研究で同定されたペプチド断片を確認することができます。定量対象ペプチドの選定などに役立ちそうです。このような検索機能は現場にとって非常にありがたく、同時に大量のメタ情報をリポジトリに登録する必要性も理解することができました。

 今後弊社内のプロテオームデータを随時jPOSTへ登録する予定です。

2018年9月3日掲載

 jPOSTへのデータ登録を始めました。こちらです。

2018年11月10日更新

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「17th Human Proteome Organization (HUPO) World Congress 2018」9月30日~10月3日、フロリダ州オーランド

 HUPOはプロテオミクスに関する国際的な組織です(https://www.hupo.org/)。ヒトだけでなく、あらゆる生物種のプロテオミクス研究を対象にしています。毎年秋に各国持ち回りで大会を開催しています。ちなみに日本プロテオーム学会 (JPrOS) はHUPOの日本側代表組織としての位置づけです。今年のHUPO大会は、本家ユニバーサルスタジオに隣接したリゾートホテルで開催されました(https://hupo.org/event-2567523)。一晩と3日間にわたって招待講演7題、一般演題約200件、ポスター発表は350件を超える規模でした。

 筆者は最近数年にわたって毎回参加しており、現地で得た最新の情報をみなさまからのお問い合わせやご依頼にお応えするために役立てています。こんなふうに特定分野の「定点観測」を続けていると、分析技術の盛衰を時間軸に沿って把握することができます。たとえば、タンパク質の計量/同定の手段を長期的な視点で見れば、プロテオミクス初期の二次元電気泳動を経て、現在はペプチド断片のLC-MS/MSが全盛です。また、質量分析計の開発に関しては、各メーカーがより高い質量精度と同定網羅性、そして計量の正確さを競っており、ここにも技術の変遷が見て取れます。昨年にはm/zに加えてイオンモビリティーの原理を加えた機種が上市されました。本年の大会では、従来よりもさらに堅牢性と安定性を上げた液体クロマトグラフと組み合わせたLC-MSシステムが紹介され、開発メーカー主催のランチセミナーは毎日盛況でした。

 より性能の高い質量分析計がどんどん市場に上がってくると、研究開発にも当然のごとく高性能機種の使用が求められます。現場の対応としては、大学組織、民間企業問わず「Core facility」の整備が重要になるのですが、この件はいずれ稿を改めて考察させてください。

2018年10月5日掲載

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「第3回 質量分析トレーニングコース(主催: 臨床質量分析共用プラットフォーム)」2018年11月12日、横浜市

 「臨床質量分析共用プラットフォーム」は、横浜市立大学が文部科学省からの助成によって進めている事業です (http://www.masspf.jp/)。今回のトレーニングコースもその活動の一環であり、最新のプロテオーム解析法に関する実習会として3回目の開催となりました。当日の会場は大入り満員で、定員を大幅に超える受講申し込みがあったそうです。

 今回のプログラムはデータ解析に関する座学で構成されました。トップ研究者による解析例の紹介とともに、解析ソフトウェアの時間も設けられていたことが特徴です。各メーカーの担当者が一堂に会して自社ソフトの原理を詳しく解説されていました。まとまった説明を聞くたいへん貴重な機会でした。

 現段階におけるプロテオーム解析の課題も浮き彫りになりました。各講師が挙げた問題の多くは当社内で普段から話し合っていることと共通しており、他の研究室や企業でも悩んでいることは大体同じであることがわかりました。ともあれ、「この数値はどのように算出されたのか?」と自問しながら解析を進める必要があると思います。

 筆者も講師の1人として参加させていただきました。「MaxQuant」というソフトウェアの原理と運用の説明を担当しました。MaxQuant は、独マックス・プランク研究所のJürgen Cox博士のグループで開発されたプロテオーム解析の総合ソフトウェアです(https://www.biochem.mpg.de/5111795/maxquant)。だれでも無償でインストールできます(2018年12月2日現在)。操作手順も簡単です。当日の講習では、MaxQuantの性能を示すために他の有償ソフトと比較した結果を紹介しました。下図はそのひとつです。jPOST (https://jpostdb.org/) に登録している自社の測定データを、MaxQuantを含めた3種類のソフトウェアで解析したところ、タンパク質同定数に大きな差は無く、その約90%は3者共通でした。

 

タンパク質同定数の比較

                  各ソフトウェアの配列データベース検索の機能を用いました。FDRなどの                                                                              条件を揃えたうえでタンパク質同定一覧をベン図表記しました。

 次回も講師をお任せいただけたら、特に分析例の解説に力を入れようと思います。現在では、各自のPCにMaxQuantをインストールし、jPOSTに登録されている生データをダウンロードすれば、だれでもプロテオームデータの解析を体験することができます。便利な時代になりましたが、こんなふうにアクセスの敷居が低くなると研究コミュニティーがどんどん拡大していくこと請け合いです。

 筆者の持ち時間の際にお見せした、MaxQuantとPerseusの動画へのリンクです。ぜひご覧ください。
 MaxQuantの使い方: https://www.youtube.com/watch?v=DpwoIVv-fGk
 Perseus使い方: https://www.youtube.com/watch?v=SKRz3PZc61E

2018年12月17日掲載

 
 
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