血清マーカーの定量分析
免疫学的検出と質量分析を組み合わせた手法 (Immuno-MS) が微量タンパク質の定量分析に威力を発揮しています。当社では、タンパク質の抗体固定化ビーズによるアフィニティ精製とLC-MS/MSを組み合わせた、血清中のα-fetoprotein (AFP) の計量法を確立しました。多摩川精機株式会社との共同研究です。
AFPはこんなタンパク質です。
・胎児の肝細胞や卵黄嚢で産生
・誕生後に血清アルブミンに代替
・分子量約70万
・肝細胞癌や精巣腫瘍の腫瘍マーカー(図1)
・iPS細胞などの分化の状態を示すマーカーとしても広く利用されています。
図1.抗原: α-fetoprotein (AFP)
多摩川精機のFG beads®に抗AFP抗体を固定化しました(図2)。
図2.抗AFP抗体の固定化
血清にAFP組み換え体を一定量添加したモデル試料からAFPをアフィニティ精製しました。FG beadsは他社ビーズと比べて非特異的な結合が少ないことが分かりました(図3)。
図3.抗体固定化ビーズ結合タンパク質のSDS-PAGE
アフィニティ精製試料をトリプシンで分解し、ペプチド混合物の測定で取得したLC-MS/MSデータを対照と比較しました(図4)。
図4.LC-MS/MSデータの解析(他社ビーズとの比較)
上: タンパク質計量値の分布。
[横軸]AFP非添加に対するAFP添加時のタンパク質計量値の割合 対数表示
[縦軸]AFP添加およびAFP非添加におけるタンパク質計量値の平均
下: AFP添加量と計量値との相関
AFPの計量値は添加量と高い相関を示しました。このことから本分析システムによって血清のAFPを定量的に計測できることが分かりました。また、FG beadsは他社ビーズと比べて非特異的な結合が少なく、かつAFPの回収量が高いことが分かりました。現在はさらに微量のAFP分子を定量検出すべく検討を進めています。
この分析例では、リガンド固定化ビーズの作成から標的タンパク質分子のアフィニティ精製までの工程を多摩川精機株式会社が担当し、トリプシン加水分解以降を当社が実施しました。受託分析企業間の連携の一環です。
2018年4月9日掲載